ワタナベ書店

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オーディオプレイヤーを再デザインした話。 またはIoT時代のOOUXについて。

この記事は「オフィスや自宅を快適にするIoT byゆめみ③ Advent Calendar 2018」23日目の記事です。

もし、オーディオプレイヤーをデザインしてくださいと言われたら、どんなデザインを考えますか?

まずは次の動画を見てもらえれば。

www.youtube.com

f:id:iuyui:20181225085113j:plain

ということで、CDケースをスピーカーにのせるだけで音楽を再生できるオーディオプレイヤーを作りました。書いたプログラムはgithubに公開しています。

github.com

はじめに

もし、オーディオプレイヤーをデザインしてくださいと言われたら、どんなデザインを考えますか?

今の時代、CDスロットがついてるスピーカーを作ったとしても使い勝手は良いとは言えません。そもそもCD以外にも私達はSpotify等のサブスクリプション方式のオーディオサービスやポッドキャストYoutubeを音だけ聞くなど様々なサービスを利用してオーディオを楽しんでいます。

それでは、オーディオプレイヤーに液晶をつけて、サービスを選び、オーディオを再生できる機能をつけたら良いでしょうか。

確かに各種サービスに接続できる機能をつけたら提示した問題点をクリアできますが、それってスマホと比べてオーディオの再生は簡単になるでしょうか。そもそも、そういう仕組みであれば、スマホBluetoothスピーカーでも接続したほうが使い勝手が良さそうにみえます。

IoTつまり、モノのインターネットという言葉が有名になり、様々な製品がインターネットに繋がる時代になりました。
その過程で、今まで存在したもの(電球、鍵、空調などなど。)に対してもインターネットに接続された製品が発売されています。
しかしながら、インターネットに接続されるにふさわしいとは思えないデザインの製品もいくつか存在しています。

今回、我が家のオーディオプレイヤーが不便で不便でしょうがなかったので作り直したことをきっかけに、IoT時代のデザインについて考えてみました。

現状のIoT製品の問題点

IoT製品について、次のような言葉をよく耳にします。

「ふんふん、それって現実のボタンがスマホのボタンになっただけでしょ。ボタン押せばいいじゃん、なんでわざわざスマホ出してボタン押さないといけないの?」

いやいや、インターネットとつながってることが便利なんですよ。いろんなサービスと組み合わせて自動化できますよ。集約化が効率を・・・。リモートで・・・。とかなんとか説得しても、ピタゴラ装置好きなユーザ以外はスイッチがインターネット上のボタンに取って代わったとしか認識できないのではないでしょうか。

単純に現実のボタンの代わりにつかうのであれば、「現実のボタンを押す」という手順を実行するにしても、スマホを出す→アプリを開く→ボタンを押す」と実行までの手順が増えており、不便に感じられます。

また、他サービスや携帯のGPSと組み合わせて自動化しようということになっても自由度が高いことが仇となり、どういう設定を組み込んだら便利になるかわからないということもありえます。

スマホのボタンになった現実のボタンの例 f:id:iuyui:20181225085335p:plain

このように、IoT製品にはいくつか問題点があることがわかりました。

  • ボタンとして使用するのであれば現実のボタンと変わりない
  • IoT化したボタンを押すまでの手順が増える
  • 自動化までのコストが高い

IoT製品のデザインで大切なこと

IoT製品をデザインするとして、単純に現実のボタンをインターネットに載せただけでは逆に不便になることがわかりました。
では、どのような製品をデザインすれば便利になるでしょうか。
一案として、先程提示した問題点を逆転させればIoT製品をデザインするとして大切なことが得られるのではないでしょうか。

  • 現実のボタンの代わりとしない
  • ボタンを押すまでの手順を減らす
  • 自動化までのコストが低い

良さそうですね。上記の条件を満たせばIoT製品として便利に使えそうです。

IoT製品のデザインについて指標は得られたわけですが、具体的なデザインをやっていこうと考えてもと良いアイデアが思い浮かばなかったので、もう一つOOUXというアイデアを使うことにしました。

OOUXとは

www.sociomedia.co.jp

上記の記事を読んでいただければOOUXについてわかると思いますが、重要な部分だけ抜粋します

OOUX という言葉を見聞きします。これはオブジェクト指向の利用者体験(Object-Oriented User Experience)のことで、いくつかの記事を読んだところ、アプリケーション設計において画面とデータを対応づける際にオブジェクトを手掛かりにするという方法論のようです。

GUI(OOUI)の基本的な操作手順として、ユーザーはまずオブジェクト(対象物)を選び、次にそのオブジェクトに対するアクションを選びます。この「名詞 → 動詞」の構文はモードレスデザインを実現するための最も重要な要素となります。別な言い方をすれば、ユーザーが「名詞 → 動詞」の順序で操作できるように、GUI はオブジェクトベースでモデリングされなければならないのです。

上記の通り、OOUX(オブジェクト指向の利用者体験)とはGUIの設計手法で「名詞 → 動詞」の構文で操作できるようにデザインしたものと言うことがわかります。

このOOUXというデザイン手法をIoT製品のデザインに応用してみることにします。
OOUXとはOOUIのことじゃないの?と引用にも書いてありますが、そもそもIoTって物理的なモノも使っていくのでユーザインターフェイスなのかなぁという疑問もあり、UXつまり体験の方を使用しています。

オーディオプレイヤーをOOUXの手法でデザインする

IoT製品をOOUXの定義に従い、「名詞 → 動詞」の構文で操作できるようにするという事も決まりましたので、実際にオーディオプレイヤーを再デザインしてみます。
オーディオプレイヤーは音楽を再生するシステムです。つまり、「音楽(名詞) → 再生(動詞)」という構文が成り立ちます。
よって、まずは最初に音楽に関連するもの(つまり、宇多田ヒカルのアルバムとか、Spotifyの今期アニメのプレイリストやNHKニュースやrebuldfmのポッドキャストという名詞)から選択するデザインにしなければなりませんね。

今までのネットワークオーディオプレイヤーはほとんどサービスを選択し、そこから聞く音楽を選択する構文(動詞 → 名詞)でした。
もちろんスマホもアプリから始まるので動詞から始まるUXと言ってもよいでしょう。聴きたいコンテンツを変えるためにサービスから選択し直すということが多々あります。

サービス(動詞)から選択しなければいけない図 f:id:iuyui:20181225085523p:plain

IoT製品はモノが現実に存在するわけですから、そこに音楽というオブジェクトを割り当てればよいわけです。簡単ですね。
よって、音楽というオブジェクトとひと目見て判断できるCDケースを割り当てることにしました。

次に、再生するという(動詞)を意味するモノを設定する必要があります。
これはスピーカーが「音を出すもの」とひと目見て判断できますので適切だと言えます。

ということで、CDケースとスピーカーこの2つのモノ接触させることで音楽が再生される仕組みを考えました。
CDケースは音楽と関連づけられているオブジェクトというだけなので、単純にmp3ファイルだけではなく、ポッドキャストSpotifyのプレイリストなどさまざまなコンテンツを紐付けられるようにします。
この条件であれば現実のボタンの代わりとしない,ボタンを押すまでの手順を減らす,自動化までのコストが低いという条件もクリアしていそうです。

  • スマホやWEBページでボタンを押す機構ではなく、
  • CDケースをスピーカーに接触させるという手順は普通にCDを再生するよりも手順が少なく、
  • 様々なWEBサービスの音楽に対してのせるだけで自動でアクセスできるようになったわけです。

さて、CDケースをスピーカーに接触させると音楽がでるという条件になるならば、
OOUXの観点からは以下のような操作を実現すれば良いでしょう。

CDケースをスピーカーにセット     →  音楽を再生
CDケースをスピーカーから離す     →  音楽が一時停止する
CDケースをスピーカーに戻す       →  一時停止した時点から音楽が再開する
違うCDケースをスピーカーにセット →  違う音楽が再生される

オーディオプレイヤーを再デザインしたった

ということで作ったのがこちらになります。

github.com

CDケースをスピーカーに接触させるというアイデアからNFCを利用することにしました。
どこのお家庭にもあるラズパイとNFCリーダーとNFCチップをご利用すれば同じものが制作できます。

NFCタグを貼り付けてキーホルダーをオブジェクトとして使ってみた

www.youtube.com

CDケースを変えるだけで音楽やポッドキャストが視聴可能

www.youtube.com

CDケースといいつつも中身はNFCチップなので、音楽データだけではなくポッドキャストやラジオもそれに対応したCDケースというオブジェクトを乗せることで再生することが可能になっています。

まとめ

OOUXというアイデアがIoT製品のデザインにもうまく使えるということがわかりました。
さて、このようなアイデアをうまく活かした実例として、次のような製品があります。
こちらは、現実のオブジェクトに対してリモコンを向けるだけですべて操作できるようにするというデザインです。 ちゃんと「名詞 → 動詞」の流れができています。

Sevenhugs Smart Remote

www.youtube.com

こういう現実のモノをうまく利用した製品が増えていけば素敵だなと思います。

参考リンク

作ったときの苦労はこちらに(ハードウェアのデザインからソフトウェアのプログラムまで全部やったので疲れた・・・)

オーディオプレイヤーをIoTで再デザインする | NHN テコラス Tech Blog | AWS、機械学習、IoTなどの技術ブログ

こちらのオーディオの再制作ですが、このときはNFCチップをオブジェクトとするアイデアはなく、ピッとリーダーに通せばいいやという考えでした。

Raspberry PiでSpotifyプレイヤーを作った話 - ワタナベ書店