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ワタナベ書店

読んだ本の感想とか美味しかったお店の紹介とかLinuxの知見とか好きなことを好きなだけ書くブログです。

お正月に読むべき長めなWEB小説まとめ

読書感想文

小説家になろうでおすすめな小説まとめ。 2015年版。
はじめは面白いなぁと思う小説でも途中で面白さがダレて飽きてしまう小説が多い中、面白さが続いてる長めな小説を紹介します。

長いのでお正月で最新話まで読み終わろうな!!

異世界居酒屋「のぶ」[415,441文字]

異世界に日本の食文化を持って行ったらどうなるの?っていう食べ物系ファンタジー。
短編連作ながら 伏線がしっかり張られているので読んでいて面白いです。
食のエピソードを取り入れているのも特徴で、サンドイッチの由来とか、タレーランの鮭のエピソードを話に組み込んだりしています。

「仔牛があまりに立派だったので、運び手が途中で落としてしまったのだ」
「もったいない……」
「誰もが惜しむような仔牛だったからな。敵対している筈の三領邦の代表からも溜息が漏れたほどだ。ところが」
「ところが?」
「先帝の合図で、仔牛がもう一頭出てきたのだ」

 あれには会食の場にいた全員が驚いた。
 前の仔牛も立派だが、今度の仔牛は更に立派だったのだ。
 後から考えれば仕組まれた演出なのだろうが、あの場ではその見事さに誰も何も言えなかった。

「その仔牛を先帝が切り分けると、北方三領邦はすっかり大人しくなった。侮っていた帝国の底知れぬ財力に驚かされたという感じだったな」

出版もされていて、小説とコミックス化したものがあります。

異世界居酒屋「のぶ」

異世界居酒屋「のぶ」

僕と彼女と実弾兵器(アンティーク)[983,639文字]

SF。コールドスリープから目覚めたらそこは未来の銀河帝国だったっていうのも転生ものにはいるのかな?
地球という惑星すら伝説になってる未来で主人公は地球に帰るために頑張ります。
未来人と現代人の思考の違いとか、思考で機械を操作するBISHOPというSFガジェットや未来の戦争の描写など丁寧に書かれていてとても好き。
これも出版されていて小説があります。

「――地球と何か、関わりのある人物のようだ。考えられる可能性はなんだろうかな……考古学マニアか、それともアイスマンか。レイラと同じ出身地という可能性もあるが、言語を知らないという点がネックだな」

 ファントムの言葉に、目を見開く太朗。今まで銀河帝国で様々な情報に接してきたが、自分以外の人間から"地球"という単語を聞くのは初めての事だった。

「いや……なんで、えっ?」

 驚きのあまりしどろもどろになる太郎に、自らの背中側を指差して答えるファントム。

「こいつを見て、すぐに銃だとわかる人間はそういない。アラン……失礼。そう呼んでもいいかな? 彼が何の反応もしなかったように、このデザインの銃は既に使われなくなって久しい。火薬推進式の実弾兵器。いわゆるアンティークという奴だね」

魔王と勇者が時代遅れになりました [529,099文字]

これもSFといっていいのか・・・?どちらかと言うとSFをファンタジーで無双物。
地球から召喚された勇者と魔王が降り立ったのは未来の世界で人類は宇宙で元気よく戦争をしていましたってお話。
魔法は廃れていて戦艦がビームを撃つ時代に魔王と勇者が生きる道はあるのか?と思ったけどファンタジーで無双し始めます。
しっかりSFの描写がしているのでその上で展開されるファンタジーネタがとても面白い。

「電磁加速砲が雷属性と予想がついたからな、砲身に雷属性強化魔法をかけた。
 ついでに弾にも『魔王の憤怒』と『加速』魔法を二重掛けまでした。
 これで威力も弾速も上昇するというものだ」

「またファンタジーですかぁぁぁ……もう便利ならどうでも良くなってきたのですよぅ」
 随分ファンタジーに毒されてきたようだ。その調子で慣れてしまうといい。

同じ作家さんのもので書籍化されています。

気がついたら転生した魔法使いでした(または、とある象の物語)[378,296文字]

完結済み。現代物でほんのりガールズラブ
ファンタジー世界の記憶を思い出してしまった主人公は、ファンタジーの記憶と今を生きる自分の記憶が「混ざらないように」書き出していきます。でも、逆にファンタジーと現実が実際に混同しはじめて・・・?って話。
ファンタジーの言語問題を主人公が日本語で記述するという形で解決しており、それをストーリーに応用していて面白いなぁと思いました。

 つまり。
『四分の二が二分の一に割り切れる』という言葉は、言語体系こそ異なれど、概念は一切変化することなく、記述されている。
 ここに、現代人である高梨遙の解釈が関与する余地は、ない。
「尻切れ蜻蛉」の誤解は、その大小を問わず、発生し得ない。

 だがそうなると、異世界の〈勇者〉が、現代日本の演劇の台本をガッチリと踏まえた喩え話をした、ということになる。
 いくらなんでも、こんなことが、偶然の範囲で起こりうるだろうか?
 これが偶然に起こりうるとするのは、「猿にタイプライターを叩かせれば、いつか偶然、シェイクスピアの戯曲が生まれる」という仮説を支持することと、そこまで変わらないのではないか?

野田秀樹の半神とかシェイクスピアとか引用があるので少し演劇に触れてると面白いかもしれません。

戯曲 半神

戯曲 半神

最果てのパラディン [488,392文字]

転生もので無双物かと思ったらまっとうなファンタジー。
3人の不死者に育てられた主人公が獣と悪魔に支配された土地を取り戻す話。
正確に発音しないと跳ね返ってくる「創造のことば」や神様に祈ることで力をもらったり、よくあるレベルアップとかスキルとかそういうシステムはない設定でどちらかと言うと指輪物語みたいなファンタジーに近いんじゃないかな。
あと、登場人物の名乗りがとてもかっこいい!敵味方ともにもうなんでこんなに格好いい名乗りをするんだ!って読むたびに興奮します。

「そして、我が神に誓う」
「我が生涯を、あなたに捧げる!
 あなたの剣として邪悪を打ち払い、あなたの手として嘆くものを救う!」

「……流転の女神グレイスフィールの灯火にかけて!」

とか

【我はヴァラキアカ! 《神々の鎌》にして《災いの鎌》!
 そして瘴毒と硫黄の王にして溶岩の同胞! 瘴毒は殺し、害し、溶岩は煮え、滾ってこその生よ!
 戦乱! 災厄! 武勲! 財宝! 死! 贄の乙女! 英雄! それら無くして何が竜か?】

・・・はぁ。格好いい。

書籍化されました。最高なので、是非。

最果てのパラディンI 死者の街の少年 (オーバーラップ文庫)

最果てのパラディンI 死者の街の少年 (オーバーラップ文庫)

最果てのパラディンII 獣の森の射手 (オーバーラップ文庫)

最果てのパラディンII 獣の森の射手 (オーバーラップ文庫)

本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ [4,407,418文字]

長い、すごく長い。でも面白い。
識字率が少なくて本がすくない世界に転生した女の子が本を求めていろいろ試行錯誤する話。
「下克上」の名の通りどんどん女の子は出世(?)して彼女の世界が広がっていきます。
第4部、5部からはハリーポッターみたいな学園編になり、ディッターというクィディッチみたいな競技がでてきたり独自のファンタジー色がとても強いので読んでいてとても面白い。
更新頻度も早くすごい勢いで文字数が増えていきます。

設定も無理がなく、多分たくさんの本を読んだ上で書いているのだと思います。
例えば「中世の食卓から」って本で、昔はスープにする前に一度下茹でして旨味の出たスープを捨てていたという記述があるのですが、実際に小説中でもその点を主人公が指摘して美味しい料理を作っていたりします。

中世の食卓から (ちくま文庫)

中世の食卓から (ちくま文庫)

「これから、スープを作って頂きます」

 わたしが書いたレシピは腸詰をスライスして煮込んで旨みを出した塩味の野菜スープだ。ちゃんと煮込めば野菜から旨みが出ることを知ってほしい。

「スープはそのまま煮込んでくださいね。茹で汁を捨てないように」
「このまま煮込むんですか?」

 フランの指示に、料理人二人は怪訝な顔になった。それでも、貴族に逆らうことはできないのか、困ったような、気持ち悪そうな顔のまま、料理を続ける。わたしのスープ作りを横で見ていた昔の母と同じような顔だ。

途中で単語とかキャラが混乱してきたらWikiを見ながら読み進めていくのがおすすめです。

これも出版されています。

本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘I」

本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘I」

幻想再帰のアリュージョニスト [2,482,021文字]

発勁用意」

 の漢字が胸部分に表示されたら攻撃のタイミングだ。

「NOKOTTA!」

 という怪しげな発音の日本語めいた脳内サウンドを合図に、体重の乗った肘打ちが人狼に直撃。表示される「HIT!」の文字。
 続けてローキックの追撃。更に右のチョップ。踊る 「COMBO!」。
 動作アシストに従って動けば、俺のような一般人でも簡単にサイバーカラテの達人になれる。ちなみにサイバーカラテはネオアメリカ発祥の機械化人体を前提とした格闘術である。

あ、そこのお前!いまこのテキストを読んでいるお前だよ!ぷっwって笑ったな!
笑うがいいさ!お前がアリュージョニスト 「3-30 その名はサイバーカラテ」を読んだ暁にはサイバーカラテカッコいい!!!って叫んでいるだろうから、今は笑っているがいいさ!!

ということでアリュージョニストのステマです。
ファンタジーSFサイバーオカルトパンクネットバトル小説。
科学技術はサイバーパンク並、オカルトもサイバーパンク並に発達した世界で二人の主人公が活躍します。
片方は未来の日本から転生してきたサイバーカラテ使いシナモリ・アキラ、もう片方は修道騎士にて言語魔術師のアズーリア・ヘレゼクシュ。
呪術にて発達した都市にて血みどろな戦いを繰り広げたり、女の子だけのチームで冒険したり百合百合したりします。はぁ。チョコレートリリー尊い。

なんて説明すればいいのかわからないけどすごい小説です。
魔王14歳さんのステマを読むとわかりやすいのでは無いでしょうか・・・。

J.L.ボルヘス

「長大な作品を物するのは、数分間で語り尽くせる着想を500ページにわたって展開するのは、労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である。よりましな方法は、それらの書物がすでに存在すると見せかけて、要約や注釈を差し出すことだ」

と言っているのですが、アリュージョニストは現実の物語、架空の物語、そして架空の神話とあらゆるものを参照し、要約を記述し、注釈を差し出し、とてつもなく長い物語を書いています。すべて借り物の設定なのに、それをうまくまとめてオリジナルの作品を創りだしています。すごい。
そして物語が物語自体を自己参照することで物語が物語を書き換えるようになってきます。すごい。Self-Reference な物語だ。まるで、トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウスみたい。すごい。あれも物語の中で登場する架空の国家が物語を書き換え、遡及的に過去をも改変していくという短編なのですがまさにそんな感じ。
そんな、アリュージョニストにてそれを支えるギミックが呪術です。

事象改竄系過去遡及呪文【叙述悪戯】。
 語りの焦点をずらし遠近感を狂わせ、時間を遡って過去の事象を再解釈し、『実はこうだった』という事実の開示(に偽装した過去改変)を行う類推呪術アナロギアの一種。
 性別誤認、年齢誤認、人物誤認、数量誤認、状況誤認、時間誤認、動機誤認、行為誤認――
 それらは発覚した瞬間、『今までそうだと思っていた確かな事実』を歪め、『実はそうではなかったという気付き』によって事象を上書きしてしまう。
 『信用できない時制と語り手の解決』と呼ばれる呪文の基本。

とか、あ、これミステリの記法じゃん!とかニヤニヤしたり、

「なんてこと、絶体絶命からの逆転劇を演出されました! このままだと、私では流れ上勝てない――アキラ! 何か勝てそうな言動をして下さい!」
 無茶振り過ぎるだろ。
 とは言え、必要ならやらなくてはならない。とにかく思いついたものを片っ端から試してみる。
「コルセスカ、この戦いが終わったら結婚しよう」
「はいっ? えっ、あのっ、そんな、まだ私達は出会ったばかりですし私にはやるべき事があって、じゃなくてそれは負けたり死んだりするパターンです! 真面目にやって下さい!」
「まだだ、まだ終わっていない、俺達には負けられない理由があるんだっ!」
「それです! その理由を具体的に詰めて下さい! 大事なのはディティールです!」

これって『フラグ』だ。そのまま物語に持ってくるなんて!って驚いたり、

経絡秘孔(セキュリティホール)を突いた。この六淫操手が操る風邪(ウィルス)は、情報に対しても有効であると知るがいい」

って北斗神拳みたいな拳法使いが情報の穴を突いて相手のハッキングを破ったり。何言ってるのかわからないですね。

哲学的ゾンビって何だろう、と思う。
 クオリア――感覚質、つまり感覚を司るアストラル体が死んでいるのに、生身のマテリアル体は生きている状態だから、ゾンビ。

って心の哲学を物語に取り入れたりなんだかいろいろすごいです。

もう、アリュージョニスト名文集みたいな流れになってしまいましたが、このお正月を消費して読む価値はあります。
めっちゃ面白いですよ!!章をかさねる事に目がぐるぐるして楽しいです。
星海社から同じ世界観でアリス・イン・カレイドスピアという小説も出てるのでそちらもおすすめです。

アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)

アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)