ワタナベ書店

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読書の秋に一気に読むべき長めなWEB小説まとめ

小説家になろうでおすすめな小説まとめ。2019年版。

食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋ですね。みなさん、充実してますか?
暇?なら読書の秋だしネット小説読もうぜということで、

senyoltw.hatenablog.jp

これのリバイバル。今回紹介する条件として、

  1. 前回紹介した小説は紹介しない。
  2. 「この連載小説は未完結のままXXXXの間、更新されていません。」という表示がある小説は紹介しない。(ただし、完結済みは除く)
  3. 長い(本人主観)

の3つを満たしている小説を紹介することにします。
書籍化されてるものは書籍のリンクも張っておきます。

長いので頑張って最後まで読み終わろうな!!

亡びの国の征服者~魔王は世界を征服するようです~ [第1部完結] [1,399,033文字]

https://ncode.syosetu.com/n5677cl/

内部では官僚が不正をし、外部から侵略者が襲ってくる国に転生した主人公がどうにか生き残ろうとあがらう戦記物。
魔法はありませんが知識チートでアベレージを稼いで敵対勢力に抵抗していきます。
主人公は人間とは異なる種族(耳が尖っていて毛が生えていたり)で、侵略者たちの宗教は主人公たちの種族を人間とは認めておらず、聖戦と称して教会が複数の国をまとめて十字軍として送ってきます。
なので、降伏とか停戦ができない状況。捕まったら殺されたり娼館に入れらてたり奴隷として働かせられたりします。
国の官僚は不正がお仕事ですというノリで、十字軍に対抗するために主人公が策を練っても邪魔されたり、知識チートを実行しようとしても既得権益を守るために潰そうとしていきます。
そんな世界で主人公がどうにか生き残るために抵抗していく話で、主人公が無条件に強いというわけではないので好き。

とりあえず、魔王が出てくるまで読むのがおすすめ。

クラ人がシャン人を討伐するために、毎度結成している連合軍を、連中は十字軍と自称している。

 十年ほど前、十字軍が隣国キルヒナ王国に送ってきた宣戦布告状には、

「我々は、神聖なる大地を穢し続ける悪魔どもに、非情なる鉄槌を下すべく結成された、神の子の軍団である。悪魔どもよ、もし己の行いを恥じ、穢れた地の浄化を望み、己の頭こうべを差し出すならば、慈悲深き神はその寵愛の一端を分け与えて下さるであろう。悔い改めよ」

 というような文句が書かれている。

 明らかに、連中はこちらを討伐すべき人外としてみなしていることが分かる。

 本気でそう信じているのかはともかく、そういう建前を作ることで、掠奪や奴隷狩りを正当化しているのは確かだろう。

予言の経済学 ~巫女姫と転生商人の異世界災害対策~ [完結] [1,064,502文字]

https://ncode.syosetu.com/n6472dl/

ファンタジー。魔法も魔物もいる世界で、予言の力を持つけど、誰にも信じてもらえない巫女姫を助ける話。
章ごとに話がちゃんと一区切りしていて読みやすい。 これも知識チートになるのかな。他の知識チート系と違って特定の製品を作って大儲けという物ではなく、仮説設定、検証、問題解決といった思考のフローチャートや仕組みを持ってきて話を進めていくタイプ。似たような作品に異世界コンサル株式会社という小説もあって、これが面白かったならこちらも是非。

「まとめる方法については考えがある」

「どんなよ」

「この七社を傘下に持つ、臨時の親商会を共同出資で作るんだ。名づけて模擬店ホールディングスだ。共同スペースの管理はこのホールディングスにやらせる」

「ホールディングス? そんなむちゃくちゃな方法聞いたいことないわ、親商会が子を作るんじゃなくて、子供が集まって親を作るっていうの」

 リルカがあっけにとられた顔になる。もちろん力の後ろ盾も、法の担保もない中では普通は無理だ。だが、今回はせいぜい二十日持てばいい期間限定。しかも共通の危機がある。砂上の楼閣でもそれくらいはなんとかなるさ。

 必ず裏切り者が出るという想定さえしておけば、だけど。

「出資形式に株式という方法を取る。出資金額に応じて株式を分配する。わかりやすく言えば、一商会当たり金貨10枚出資したら、ホールディングスの資本金は金貨70枚だろ。代わりに株を10ずつ持ち合うわけだ。そして、この資本金で中庭に席を作る。つまり、共同席を作るという巨大なリスクを、七商会で分散するわけだ」

ノーライフ・ライフ [完結] [841,784文字]

https://ncode.syosetu.com/n8390n/

異世界に転生したけど死んでしまった男が幽霊となって、魔法というファンタジーを研究していきどんどんSFに重心を移していく話。
高度に発達した科学は魔法と区別がつかないを地で行く話で、最初は火の玉よ飛んでいけ!ファイア!ってファンタジーやってたのにどんどんサイエンスなファンタジーになっていって面白い。 主人公が幽霊という不死(ノーライフ)を活かして、普通に100年とかどんどん時間が過ぎていき、ワイドスクリーン・バロックっぽさを醸し出していきます。 どのくらいかというと、最初は中世の村からなのに、最後は核戦争ができて、他の星に移住するレベルまで。

電流が流れると、Aはエーテルを帯びる。これをA(e)と表記しよう。A(e)はH側へ移動する。H側へ移動したA(e)はHと結合し、また結合と同時にエーテルをHへ移動させる。するとHがエーテルを帯び、A―H(e)となる。A―H(e)はE側へ移動し、Eと結合する。この時Eと結合するのはエーテルを帯びているHであり、結合と同時にエーテルはHからEへ移動してA―H―E(e)となる。更にWへ移動すればA―H―E―W(e)となり、以下同様にして魔法基は結合していく。

 そして正極側の終点に到達すると、連結した魔法コードが魔質の外へ吐き出され、それと同時に魔法コードが示す内容に基づいた魔法が発動するのだ。

 この基礎構造に基づいて行使される魔法を、魔力伝導式魔法コード構築法、略して「魔導」と呼ぶ。

おー、魔法がどんどん科学的になってくーってぼーっと読んでたら、このような、な、何を言っているんだ・・・? ってレベルまでいきます。

家の納屋にダンジョンがある ―God in the abyss of despair― [連載中] [926,252文字]

https://ncode.syosetu.com/n7386ct/

家の納屋に封印されたダンジョンがあったから潜ってデーモン共をぶち殺してやるぜ! たまに装備の更新をして+1をつけてもらったり、袋の空きスペースに入れるアイテムに悩むソウルライク・ローグライクファンタジー
作者の止流うず先生、いろんなジャンルのゲームの概念を物語に落とすのがうまくて、ローグライクなダンジョンに潜っていく話を物語にした、この「家の納屋にダンジョンがあるソーシャルゲームをテーマにした「ソシャゲダンジョン」、Cviライクなストラテジーゲームをテーマにした「創世のアルケミスト~前世の記憶を持つ私は崩壊した日本で成り上がる~」などがあり、どれも面白くておすすめ。

「そのメイスは『+2』ってとこだなァ。ちっと昔の概念が混じってるから後でェ調整しといてやるよォ。で、蝋材なら持ってきてるからよォ『+5』まではやってやれるぞぉ。『強化』は相応にギュリシアも貰うからよくよく選ぶといいさなァ」

「プラス……。ぷらす?」

 よくわからないものの数え方だった。初耳である。

「大陸から入ってきた数の数え方だよ。数学とかいう奴だ。昔ァよ、強化したら『永劫たる』だの『刃足す』だのいろいろ名前付けてたもんだが、こいつの方が楽なんだよなァ。プラスだのマイナスだのが。強化って概念には一番しっくりくるってもんだァ」

アルバート家の令嬢は没落をご所望です [本編完結] [883,523文字]

https://ncode.syosetu.com/n4499cf/

とりあえず悪役令嬢物でおすすめっていうと、この作品。
コメディ寄りの悪役令嬢転生もので、良い感じに挟まれるギャグがテンポ良くてスラスラ読める。
物語の登場人物転生物や、タイムリープ物には2パターン話の進め方があると私は思っていて、「シナリオは変えられる」タイプと「シナリオは変えられない」タイプ。後者はタイムリープ物だと歴史の修正力とかよく言いますね。
この作品も後者の「シナリオは変えられない」タイプ。この変えられない象徴として、面白ガジェットを設定してあり、それが縦ロールなのが最高。

間違いない、自分はあのゲームに出てくる悪役令嬢のメアリだ。

 美人で聡明だが気が強く、きっちり巻かれた銀髪の縦ロールがいかにもといった風貌の我儘お嬢様。

 なるほどどうりで、どんなに強いストレートパーマをかけようが、美容師の「終わりましたよ」の「よ」と同時に髪形がロールされるわけだ。

 それはもう驚くほどの威力で、いったい何人のカリスマ美容師達が強固な縦ロール(ドリル)に敗れて鋏を置いていったことか……。思い出すだけで胸が痛むが、それと同時に顔の両サイドで縦ロール(ドリル)が揺れるのだから居た堪れない。

 しかし、それがゲームの強制力によるもの、自分を悪役メアリにするために必要不可欠な要素だというのなら納得しよう。……些か不服ではあるが。

リビルドワールド [連載中] [2,652,044文字]

https://ncode.syosetu.com/n9736dt/

ポストアポカリプスの世界で旧世界のAIと出会った少年が強くなる話。SFとバトル物と人間とAIのバディ物
AIが人間臭くなくて、親密に会話するシーンがあっても、ちゃんと計算ずくでその親密さを出しているという描写がとても良い。他にでてくるAIも同様で、対人間のコミュニケイション能力は持ってるけど、本質は人間と違う価値観を有している描写があって非人間さをしっかりだしています。
やっぱり、AIは人間らしさを手に入れるとかそういうのより、絶対に人間では理解できない価値観があるほうが良いし、そんな存在と一緒に戦う話は最高だな!(拙者、人間と怪物のバディ物好き侍)

アルファの話は全て上辺だけのものだ。善行で運気が良くなるなど欠片かけらも思っていない。全て口実だ。そして、シェリルを助ける口実でもない。

 殺しに躊躇は無く、だがその基準は不明確。そのアキラの行動原理をより良く知る為ために、その機会をシェリルに提供してもらう為ために、アキラと関わる機会を増やしただけだ。襲撃者達の一味という適度に見殺しに出来るであろう人物を、アキラがどこまで助けようとするか。観察にはちょうど良い対象だった。

 全てはアルファ自身の目的の為ために。それだけだった。

リビルドワールドI〈上〉 誘う亡霊 (DENGEKI)

リビルドワールドI〈上〉 誘う亡霊 (DENGEKI)

  • 作者:ナフセ
  • 発売日: 2019/05/17
  • メディア: 単行本

お前が神を殺したいなら、とあなたは言った [完結] [928,248文字]

https://ncode.syosetu.com/n7775do/

異世界神殺しファンタジー
群像劇、悲劇、陰謀、神学論争、シェイクスピア、殺伐百合、イケオジ、宗教とは何か。異端とは何か。そして、どうやって神は殺されたか。
これ、すでにブログで布教済みなんだけど、前回は紹介してないし、好きだからもう一回位紹介してもいいよね。
神が実際に力を持ち、宗教も盤石な世界で、現代で新興宗教の教祖やってた主人公が神を殺そうとする神殺しファンタジー。群像劇で物語の語り手が毎回変わっていきます。
言わゆるナーロッパとは一線を画したがっつり重めな宗教が味わえます。
神から異端発生の神託を受け取ってやってきた異端審問官たちと神殺しを狙う主人公たちとのキャッキャウフフな会話劇や、濃厚な神学論争、 陰謀につぐ陰謀とそれを暴こうとする人たち。頭が良いキャラクターがいるかと思えば、人は堕ちようと思えばどこまでも堕ちれるというような最悪なキャラクターも出てきます。
がっつり重めな宗教がテーマってことで、隠れた悪魔崇拝の司祭が信者に行った儀式は信者に正しく神の恩寵を与えられるか?といった「異端の汚染問題」などなど語られます。
重い物語だけど、かなりおすすめ。

けれどフランシス説の否定、つまり「司祭という地位にふさわしくないほど堕落した司祭が行った儀式には、神意が届いていない」ということになると、これは極めて危険な考え方だ。

 一見すると、この説は正しいように思える。青臭いけれど、筋は通っている、的な。

 でもこの説が正しいとすれば、「信徒に隠れて悪徳に耽っていた司祭」が為した洗礼や告解はすべて無効、ということになる。つまり、一瞬にして大量の「洗礼を受けていない、みなし異端者」ないし「告解せずに死んだ、迷える魂」が発生する。ここで発生する社会的混乱を修復できる可能性は、皆無だ。

リア王 (新潮文庫)

リア王 (新潮文庫)

ここらへんがネタ元らしいので面白かったらぜひこちらも。